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最高裁判所第一小法廷 昭和37年(オ)209号 判決

上告人 ローランド・ゾンダーホフ

被上告人 大蔵大臣

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人ベン・ブルース・ブレークニ名義および同馬場東作、同福井忠孝の上告理由第一点について。

論旨は、原判決が本件競売を含む換価行為は行政事件訴訟特例法一条にいう行政庁の処分にあたらないと判断したことは法令の解釈を誤つたものである、という。

しかし、行政事件訴訟特例法一条にいう行政庁の処分とは、所論のごとく行政庁の法令に基づく行為のすべてを意味するものではなく、公権力の主体たる国または公共団体の行為のうち、その行為によつて直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているものをいうものであることは当裁判所の判例とするところである(昭和二八年(オ)第一三六二号同三〇年二月二四日第一小法廷判決、民集九巻二号二一七頁)。ところで、本件競売を含む換価行為は、昭和二二年二月四日連合国最高司令官によつて、非難すべきドイツ人たる上告人が日本国において所有する財産として押収され、米英仏のいわゆる三国に帰属したものとされている所論土地建物につき、三国委員会の要請に基づき、被上告人が昭和二八年三月一二日ドイツ財産管理令一一条一項の規定によつてなされたものであること、上告人の主張自体に徴して明らかであるから、上告人の財産権に関係のある行為とは認められず、従つて、行政事件訴訟特例法一条にいう行政庁の処分に該当しないと解すべく、これと同趣旨に出た原審の所論判断は正当であつて論旨は、理由がない。

同第二点について。

論旨は、原審が不当に本件訴に対する裁判権を否定した第一審判決を支持したことは、憲法三二条に違反する、という。

しかし、原審が第一審判決の訴却下の結論を支持したのは、前記上告理由第一点において述べたような趣旨において、本件競売を含む換価行為が行政事件訴訟特例法一条にいう行政庁の処分にあたらないという理由に基づくものであつて、所論のごとく第一審判決の訴却下の理由を是認したことよるものでないことは判文上明らかである。

それ故、論旨違法の主張は、原判決の判示に対する非難ではなく、前提を欠く主張たるに帰し、適法な上告理由とは認められない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判官 入江俊郎 長部謹吾 斎藤朔郎)

上告理由書〈省略〉

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